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アンシェヌマン
アンシェヌマン(enchaînement)というのは、一般的には「連鎖すること」という意味ですが、フランス語の発音に関して言う場合には、
二つの単語が連続する場合に、前の単語が子音で終り、かつ、後の単語が母音で始まるときには、当該子音と当該母音がくっつけて発音されるという現象
をいいます。
この場合、前の単語については、必ずしも子音字で終わっていなくてもよく、音自体が子音で終わっていればこの条件をみたします。例えば、「子音字+無音のe」で終わっている単語の場合には、綴りは子音字で終わっているわけではありませんが、音は子音で終わっていますので、アンシェヌマンが起こる条件をみたしています。
同様に、後の単語についても、「h+母音字」で始まっている場合には、この条件をみたします。なお、後述のリエゾンやエリジヨンが起こるかどうかについては、hが有気(aspiré、有音)か無音(muet、無気)かによって違いが生じますが、アンシェヌマンについては、このような違いは生じませんので、気にする必要はありません。
これだけでは抽象的で何が何だか分からないと思いますので、実例を挙げましょう。
Il arrive à Paris.
(彼はパリに着く)
という場合に、個々の単語は[il][ariv][a][pari]と発音しますが、これを文章として発音すると、
[ilarivapari]
となります。そして、これを聴く場合には〔イ・ラ・リ・ヴァ・パ・リ〕というリズムで聴こえてきます。
なぜこういう現象が起こるかというと、最初にご説明したように、
「子音+単母音」+「子音+単母音」+「子音+単母音」+・・・・
というのが、フランス語のリズムであるからです。
英語でも「I love you.」というのは〔アイ・ラッヴュー〕と聴こえてきますが、それと似たような現象だと思っていただいて構いません。ただ、英語では二重母音があるので、フランス語のように〔タ・タ・タ〕というリズムにはなりません。
韓国語でも、アンシェヌマンに似た現象が起こります。
これに対して、アンシェヌマンが起こらない言語というのもあります。例えば、日本語では、アンシェヌマンは明確に禁止されています。もししてしまうと意味不明になります。「どんどんアイスとパン開けて」という文章を〔ドンドナイストパナケテ〕と発音すると、まったく意味が取れません。
ドイツ語でも、日本語ほど厳格ではありませんが、アンシェヌマンが起こらないようになっています。
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